太陽光発電は、節税商材の歴史で最も古く、最も長く生き残っている商材だ。ただし「100%即時償却」の太陽光は2015年3月31日の取得分で終わっており、今売られている「太陽光で即時償却」は、自家消費型に限った別の制度の話である。この二つを混同したまま売っている業者がいるので、分けて書く。
封じられる前の仕組み
2011年の固定価格買取制度(FIT)の開始と前後して、グリーン投資減税という制度があった。エネルギー環境負荷低減推進設備を取得した場合の特別償却または税額控除で、太陽光発電設備は取得価額の100%を初年度に即時償却できた。
法人がFIT認定を受けた土地付きの分譲太陽光を買う。発電した電気は全量を電力会社に20年間固定価格で売る。初年度に全額損金、翌年から売電収入。法人が自分で電気を使う必要はなく、発電所に行く必要もない。当時の売り文句の利回りは一次資料で確認できていないため、ここでは書かない。
何がどう変わったか
太陽光の即時償却は、2015年3月31日までに取得した設備で終わった(風力は2016年3月31日まで)。2016年4月から2018年3月までは30%の特別償却(中小企業は7%の税額控除も選択可)に縮小し、対象もFIT認定を受けない10kW以上の設備に限られた。そしてグリーン投資減税そのものが2018年3月31日で終了し、延長されなかった。後継の省エネ再エネ高度化投資促進税制が2018年4月に始まったが、即時償却の制度ではない。
現在、太陽光で即時償却が語られるのは中小企業経営強化税制の枠組みである。ここには二つの壁がある。一つは指定事業の壁で、この税制の対象事業に「電気業」は含まれていない。中小企業庁は、全量売電の場合は電気業の用に供する設備になるため対象外だと整理している。もう一つは条文上の除外で、国税庁の令和7年度改正概要にも「発電の用に供する設備で主として電気の販売を行うために取得等をする機械装置並びに建物及びその附属設備」は対象外と明記されている。販売見込みの電気量が発電量の2分の1を超える設備が除外の目安とされる。
なぜ封じられたか
太陽光の場合、他の商材のような「節税スキーム対策」として封じられた形跡は薄い。グリーン投資減税は時限の政策減税で、期限どおりに縮小・終了した。経営強化税制での売電設備の除外は、制度の趣旨(自社の経営力の向上)に電気の販売業が合わない、という整理である。会計検査院の指摘は確認できていない。
つまり太陽光は「封じられた」というより「制度が役目を終えた」商材で、FIT価格の低下と併せて、商材としての魅力が制度の側から順に剥がれていった。
改正後に残ったもの
自家消費型は今も対象である。製造業の工場や倉庫の屋根に設備を置き、発電した電気を自社で使う場合、または自家消費率が50%以上で余剰分だけを売る場合は、経営強化税制のA類型・B類型で即時償却または税額控除を受けられる。適用期限は2027年3月31日まで延長されている。
これは節税商材ではなく、設備投資である。電気代を減らすために設備を買い、その設備に税制優遇がつく。売り手がここに「即時償却」の看板を掲げるのは正しいが、「発電所を買って売電で儲けながら即時償却」という2015年以前の商材とは別物である。
その後、買った人に何が起きたか
即時償却で買った全量売電型の発電所は、20年の固定買取が続く限り収入はある。ただし2012〜2014年の高い買取価格で組んだ案件は2032年以降に順次FITが終わり、その後は市場価格での売電か設備の撤去を迫られる。撤去費用の積立が義務化されたのは2022年以降で、それ以前の案件は出口の費用が見えていない。追徴や訴訟は公的資料で確認できていない。
組成側の視点
太陽光は、器の設計が要らない珍しい商材だった。FITという国の制度が利回りを保証し、税制が損金を保証した。だから売り手に金融の知識は要らず、参入業者が多かった。その多くが、FITの単価が下がると太陽光から次の商材へ移った。太陽光を売っていた会社がGPUサーバーを売っている例は、この業界では珍しくない。売っている会社の沿革を見ると、商材が封じられる順番がそのまま並んでいることがある。
次に封じられる商材を読む物差し
太陽光が示したのは、「指定事業」という壁である。経営強化税制は、自社の事業を強くする設備のための制度で、事業の種類が指定されている。買った設備で行う事業が、自社の指定事業に入っているか。全量売電は電気業だから外れた。GPUサーバーを貸して収入を得る事業は何業なのか、トレカ自販機を置いて売上を得る事業は何業なのか。この問いに答えられない商材は、太陽光と同じ壁に当たる。