中古ヘリコプターは、経営強化税制を使わない。だから令和5年度や令和7年度の改正の影響を受けていない。使うのは中古資産の耐用年数の簡便法で、これは中古トラックやキャンピングカーと同じ、最も古い型の短期償却である。違いは金額の大きさと、器が「共同購入」になることが多い点にある。
仕組み
法人が中古のヘリコプター(Robinson R44、AS350など)を買う。1機4,000万円から1億円。買った機体を運航会社にリースし、運航会社は遊覧、訓練、報道、物資輸送に使ってリース料を払う。2〜3年後に機体を売却し、投資家はリース料と売却代金を受け取る。
1機を買えない法人向けに、500万円から参加できる共同購入の型がある。複数の法人が1機を共有し、出資割合に応じて損益を取り込む。この型を売っているのは、自社で運航事業を営む航空会社で、リース先も自社である。売り手と運航会社と借り手が同じ会社になる。
税務は中古資産の耐用年数の簡便法による。ヘリコプターの法定耐用年数は5年で、5年を全部経過した中古機は簡便法で2年になる。耐用年数2年の定率法の償却率は1.000なので、期首に取得すれば初年度に全額を償却する。期中取得なら月割で、残りは翌年に落ちる。
期間
2〜3年で売却する設計が多い。機体は寿命が長く、20年以上飛ぶので、2年後の売却価格は買値の8〜9割が業者の事例である。売却先は運航会社自身か、その紹介先になる。売却に3〜6か月かかると業者は書く。
キャッシュフロー
Robinson R44相当を3,960万円で購入、リース収入が2年で931万円、2年後に3,438万円で売却(回収110%)という業者の事例。期首取得で初年度に全額償却。実効税率33%。単位は万円。
| 年 | 投資・売却 | 分配・収入 | 損金(−)/益金(+) | 税効果 | 税引後CF | 累計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0年目 | ▲3,960 | 0 | 0 | 0 | ▲3,960 | ▲3,960 |
| 1年目 | 0 | +466 | ▲3,494 | +1,153 | +1,619 | ▲2,341 |
| 2年目(リース+売却) | +3,438 | +465 | +3,903 | ▲1,288 | +2,615 | +274 |
| 合計 | ▲522 | +931 | +409 | ▲135 | +274 |
数値は第三者の体験談サイトに掲載された業者事例(機種・金額・回収率)。どの販売会社の商品かは非公開で、特定の会社の実績ではない。
税引前409万円の上乗せが、税引後で274万円。2年で回収110%は年率5%相当で、税引後では3.4%程度。初年度に1,153万円の税が減り、2年目に売却益で1,288万円を払う。損金3,960万円と益金4,369万円の差が409万円で、税効果の合計▲135万円はその33%に等しい。
この商材の特徴は、繰延べの期間が2年と短いことにある。オペリースの10年、コインランドリーの10年と比べると、税を前借りする期間が短い分、繰延べの価値も小さい。代わりに資金の拘束も短い。
PLへの効果
初年度のPLに減価償却費3,960万円が立つ。本業の利益がそれ以下なら赤字決算になり、この点はオペリースと同じ。2年目は売却益3,438万円が特別利益または営業外収益として立ち、前年の赤字を一気に埋める。2年間で見れば利益は409万円で、繰延べは1年である。
保険の解約返戻金や不動産の売却益が出た年に、翌年の退職金とぶつけるための1年の繰延べ、という使い方が最も素直である。売り手が保険代理店向けのセミナーでこの商材を売っているのは、保険の出口として位置づけているからである。
査定
税務の論点は少ない。簡便法は制度として確立し、封じられた商材の除外条項は経営強化税制と少額減価償却の話で、ここには及ばない。ただし「貸付けの用に供する資産」を法人が持つ構造は、ドローン・足場と同じ「貸して損金だけ取る」型で、次の改正で狙われる可能性は残る。
商品の論点は売却価格と運航会社にある。回収110%は、売却価格が買値の87%で決まったから成り立つ数字で、機体の状態、飛行時間、事故歴、市場の需要で動く。運航会社が傾けばリース料が止まり、機体は運航会社の格納庫にある。法律事務所は、航空法上の「航空機使用事業」の許可との関係、契約の一方的解除、処分価格の不当性を論点として挙げている。
器の論点もある。共同購入で出資割合に応じて損益を取り込む設計は、実質が匿名組合や任意組合なら金融商品取引法の対象になりうる。販売する航空会社に金融商品取引業の登録があるかは、公開資料では確認できていない。
組成側の視点
ヘリコプターは、売り手が本業の運航事業者であることが、他の商材と決定的に違う。機体は本当にあり、本当に飛び、リース料は本当に運航収入から払われる。だからこそ、売り手が「売る側」「借りる側」「買い戻す側」を全部兼ねる構造になる。買値も、リース料も、売却価格も、同じ会社が決める。回収110%は、その会社が110%になるように決めた数字だと考えて読む。
買ってよい法人、買ってはいけない法人
翌年に大きな損金(退職金、修繕)が予定されていて、1年だけ課税を送りたい法人には、2年拘束の繰延べとして成立する。売却価格の下振れ(買値の7割になれば税引前で赤字)を受け止められる資金余力が要る。共同購入の型では、募集する側の登録を確認できない案件は見送る。